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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第16章 第三話 【むせび泣く月】 飛翔する鳥

 これだけはどうしてもきちんと話しておかなければならないとキョンシルが言いかけると、トスは真剣な面持ちで首を振った。
「その話なら、もう良いのだ。何もかも含めて、すべてが誤解だと聞いた。そなたはもう余計な気を遣うな」 
 夜明け前の無色の光が空にひとすじの軌跡を描く。その間に空は燃え立ち、昇る太陽のわずかに温かみを滲ませた光が二人を優しく包み込む。
―どうか、万世を遍く照らす聖君におなり下さいませ。影ながら、これよりのますますのお栄えをお祈りしております。
 キョンシルは昇る太陽を見ながら、心から祈った。

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