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　女が堪りかねたように、トスの手から酒の入った銚子を奪った。既にトスの周囲には多くの空いた銚子が散乱している。
　トスが酔いに赤らんだ眼許に険を滲ませ、女をにらみ付けた。
「この見世では、客は自由に酒も飲めないのか？」
　女はかぶりを振った。
「これ以上飲み続けては、お身体に障ります」
　トスは鼻で嗤う。
「別に俺がどうなろうと、妓生の知ったことではない。余計なお節介はかえってうっとうしいだけだ。放っておいてくれ」