
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男
ふいに眼前に迫った女とキョンシルの黒い瞳が自然に重なる。トスの手が無意識の中に伸び、女のチョゴリの紐を解こうとした。
ふいに我に返り、トスは慌てて首を振った。
―一体、ここで何をしているんだ、俺は。
飛び退(すさ)るように女から離れた。
「済まない。どうかしていた」
褥の上に胡座をかき、愕然とする。
女がそっと身を起こした。
「何もお謝りになることはありませんよ。旦那さまは当然のことをなさろうとしただけですもの。私は妓生ですから」
最後の言葉は特に自嘲めいているわけでもなく、実に淡々としたものだった。だからこそ、余計にトスは自己嫌悪に陥った。
ふいに我に返り、トスは慌てて首を振った。
―一体、ここで何をしているんだ、俺は。
飛び退(すさ)るように女から離れた。
「済まない。どうかしていた」
褥の上に胡座をかき、愕然とする。
女がそっと身を起こした。
「何もお謝りになることはありませんよ。旦那さまは当然のことをなさろうとしただけですもの。私は妓生ですから」
最後の言葉は特に自嘲めいているわけでもなく、実に淡々としたものだった。だからこそ、余計にトスは自己嫌悪に陥った。
