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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 そう、彼の恋人はいつも凜として前を見つめて咲いている。向日葵の花はいつも太陽の光を自ずから探し当てるという。どんなに陽光の少ない場所でも、かすかな陽の光をも探し当て、その方向へと伸びてゆこうとする。
 そして、キョンシルはそんな少女であった。どんな逆境に陥ろうとも、運命に挫けることなく真っすぐに光に向かって伸びてゆこうとする花だ。その真っすぐさが彼にはどれだけ眩しく魅力的に映じることか。恐らく、当のキョンシル自身は知らないだろう。 
 他の女を想いながら、その代償として眼の前の女を抱くのは男として、いいや、人間として最低だ。キョンシルへの裏切りだけではなく、この女をも冒涜することになる。

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