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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 普段は相手にしないのに、昨夜に限って相手の調子に乗せられてしまったのは、トスもやはりその時既に相当に酒が回っていたに違いない。
―煩いと言っているだろう!
 トスはウンスクを殴りつけ、酒場を飛び出した。その勢いで色町へと向かい、後は承知のとおりということになってしまったというわけだ。
 それにしても、我ながら、自分がここまで狭量な男だとは思ってもみなかった。何をしていても、ついキョンシルのことばかり考えてしまう。いや、ただ想い人のことを考えるだけならばまだ良いのだが、トスの頭を占めるのは、キョンシルがあの若者―畏れ多くも何と朝鮮国王だった―イ・ソンに抱かれている場面ばかりだ。

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