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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 それは全くあり得ない話であった。恋敵としてのはばかりはあるが、個人的には、あの若者には何の遺恨もない。むしろ、人好きのする、今時の若者には珍しいくらい人の好い青年だ。
 しかも、それが国王さまだというのだから、今でさえ信じられない話だ。王として生まれ、わずか十一歳の幼さで即位したのだから、誰もが自分にかしずいて当たり前、そんな風に傲慢に育っていても不思議はない。だが、ソンは控えめで他人にも気配りのできる青年であった。
 あの若者がこの国の王だというのなら、まだ朝鮮の未来にもわずかなりとも救いがあるというものである。他人を見る眼は厳しいトスがそこまで買うのだから、人柄には申し分ない、つまり信頼するに足る男だということである。

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