
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男
「俺は知らねんだ。あのいつもの酒場の他に、兄貴の行きそうな見世なんてないはずだけどなあ。姐さんは心当たりはあるかい?」
〝夫婦でおじさんも何もないだろ、もう少し別の呼び方はないのかい?〟、それがウンスクの口癖だ。それでも、彼はキョンシルをトスの女房だと信じ普段から〝姐さん〟と呼んでいた。
「酒場でもないとすると、まさか色町―」
言いかけて、ハッと口を手のひらで押さえる。
「なーんてな。そんなわけないよ。あの兄貴に限って、そんなはずはない」
一人でぶつぶつと呟き、キョンシルを安心させるように笑った。
〝夫婦でおじさんも何もないだろ、もう少し別の呼び方はないのかい?〟、それがウンスクの口癖だ。それでも、彼はキョンシルをトスの女房だと信じ普段から〝姐さん〟と呼んでいた。
「酒場でもないとすると、まさか色町―」
言いかけて、ハッと口を手のひらで押さえる。
「なーんてな。そんなわけないよ。あの兄貴に限って、そんなはずはない」
一人でぶつぶつと呟き、キョンシルを安心させるように笑った。
