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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第17章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】・戻らぬ男

 烈しい口づけは終わらない。唇はひとたび離れたかと思うと、また重なり、角度を変えて延々と続く。
 漸く唇が離れた時、キョンシルは荒い息を吐きながら、トスを睨んだ。
「トスおじさん、酷い」
「何が酷いんだ? 俺はそなたの望みを叶えてやっただけだが」
 悪びれもせずに言う男の面には、何の感情も宿ってはいない。
「私が言った子ども扱いしないでという意味は、こんなことではないわ。もっと、精神面で尊重して欲しいと言っているの」
「ホホウ、精神面ときたか。流石に仙女(ソンニヨ)の娘だけはある。いちいち口にすることが高尚すぎて、頭の悪い俺にはついてゆけないな」

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