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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第18章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 祖父の願い

 雪が降り始めてから、外は俄に薄暗くなってきている。
「こんな日に戸を開けてボウとしてたら、冗談ではなく風邪を引くぞ?」
「そうね」
 キョンシルは消え入るような声で言い、室に戻った。心尽くしの手料理はもうとうに冷めている。
「ごめんなさい。すっかり冷えてしまったわ。クッパだけでも温め直してくるから、待ってて」
 立ち上がりかけた時、眼の前に何かが差し出された。愕いてトスを見上げると、トスが照れたような表情でそっぽを向いている。
「ソンスどのの屋敷の庭に咲いていたのを一輪、失敬した」

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