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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会

「お祖父さま、ご機嫌いかがですか?」
 我ながら、こんなときに何とも間の抜けた挨拶だと思ったけれど、ただでさえ働かない頭が余計に錆びついたように動かない。
「どうもこたびばかりは、良くはないようだな。キョンシルよ、いよいよ儂も息子の許へ旅立つ日が近くなった」
 せめてもの救いは、イルチェの話し方が存外にしっかりしていることだ。卒中の発作を起こした後は、時として身体に麻痺を伴ったり言語障害を起こしたりすることもある。イルチェの話し方は声に精彩こそないものの、ごく普通で異常はない。
 キョンシルの心にかすかな希望の灯がともった。

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