テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会

 最後の科白はキョンシルにではなく、亡き父に向けられたものだと判る。ややあって、イルチェが問うた。
「キョンシルや、あの若者は一体、何者なのだ? 一見したところ到底、ただ者には見えぬが」
 そこで、キョンシルはトスが都から離れた海辺の町で生まれ育ったこと、中流両班の子息であったことをかついまんで話した。
 イルチェは孫娘の話を一言一句聞き洩らすまいと耳を傾けているようである。やがて、深い息を吐き出した。
「なるほど、地方両班の倅であったとはの」
 老人の眼に生気が宿っている。何かを新しいことを考え始めている証だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ