無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　短い沈黙を破ったのもイルチェであった。
「あの男が両班の息子であるというのなら、話はまた別だ。氏素性賤しくない家門の出なら、実家の家門が絶えていようがいまいが、そんなことは問題ではない。そなたの婿に迎えて崔氏当主の座を譲ることもできよう」
　見舞いに訪れたキョンシルの方が逆にイルチェに励まされる形になった。
「もう少し刻をくれぬか。そなたの話を疑うわけではないが、あの青年が真に両班であるかどうか、故郷の町まで人をやって調べさせるゆえ。もし真であるというならば、儂はそなたとあの若者にこの家の行く末を託したいと思う」
「お祖父さま」
　キョンシルの瞳に涙が滲む。