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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第19章 第四話 【牡丹の花咲く頃には】 再会

 口では空元気を装ってはいるが、イルチェの小さな顔には濃い疲労の色が滲んでいた。
 祖父と話す嬉しさについ我を忘れた迂闊さをキョンシルは悔やんだ。
「また必ず参ります。どうか、お身体をお大切になさって下さいませね」
 言い終わったその時、扉の向こうから遠慮がちな声が響いた。
「お話し中のところを恐れ入ります。旦那さま、崔旻丑(ミンチユ)さまがお見えでございますが」
 イルチェが頷いた。
「夜分に一体、何用だ? 大方、なかなか儂があの世に逝かんので、待ちきれずに様子を見に来たのであろうて」

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