
変人を好きになりました
第15章 知り合いと恋人
ひとつ咳払いをしてからもう一度質問をする。
「それからどうしたんですか? 彼女に思い出してもらえましたか?」
「いや。彼女の近くにいることができるようになってからも、彼女は僕のことを思い出した様子はなかったよ。それでも、よかったんだ。僕は昔のことを言い出す勇気がなかったし、彼女といるだけで満足だった」
懐かしむように遠い目をするクロタキさんに何故か私の胸がチクリと痛んだ。もしかして、その彼女って最近別れた恋人のことかもしれない。
「それだけで幸せだったんだ……なのにあの女が」
「あの女?」
突然聞こえてきて不穏な声色に驚く。
「彼女のことをネタに脅されたんだ。彼女を傷つけるわけにはいかないから従うしかなかった」
「そんな……」
ずっと想っていた人と再会できて、これからという時に邪魔をされるなんて。しかも、脅迫なんて酷すぎる。
「僕は彼女の前でその女と付き合うことになった。それが彼女を守る唯一の方法だと思ってた。でも……僕の方は耐えがたかった。彼女は他の男と付き合い出して、僕のことを恨んでさえいた。なんのために自分を犠牲にしているのか分からなくなった。それでも、彼女と一緒になるのを諦めることなんてできなかったから、計画を立てたんだ」
「計画ってどんな?」
「彼女の弱みを握っている女からそのデータとそれから彼女を他の男から奪う計画だ」
薄ら笑いを浮かべながら喋るクロタキさんは痛々しい。
「上手く、いったんですか?」
「途中までは。途中で彼女が予想外の行動をしてくれてね、それに彼女の恋人も僕の計画を滅茶苦茶にしてくれたよ。でも、正直嬉しかった。彼女の行動がすごく。嬉しかった」
切れ切れになっている言葉に首を傾げてクロタキさんをじっと見つめると唇から血の気がなくなるほど強く奥歯を噛みしめているのが見てとれた。私は息を小さく吸い込んで止めた。
「クロタキさん?」
「嬉しかったのに……僕はとことん馬鹿だった。彼女を最後の最後で守れなかったんだ。誰よりも高いIQは何の役にも立たなかった」
「それからどうしたんですか? 彼女に思い出してもらえましたか?」
「いや。彼女の近くにいることができるようになってからも、彼女は僕のことを思い出した様子はなかったよ。それでも、よかったんだ。僕は昔のことを言い出す勇気がなかったし、彼女といるだけで満足だった」
懐かしむように遠い目をするクロタキさんに何故か私の胸がチクリと痛んだ。もしかして、その彼女って最近別れた恋人のことかもしれない。
「それだけで幸せだったんだ……なのにあの女が」
「あの女?」
突然聞こえてきて不穏な声色に驚く。
「彼女のことをネタに脅されたんだ。彼女を傷つけるわけにはいかないから従うしかなかった」
「そんな……」
ずっと想っていた人と再会できて、これからという時に邪魔をされるなんて。しかも、脅迫なんて酷すぎる。
「僕は彼女の前でその女と付き合うことになった。それが彼女を守る唯一の方法だと思ってた。でも……僕の方は耐えがたかった。彼女は他の男と付き合い出して、僕のことを恨んでさえいた。なんのために自分を犠牲にしているのか分からなくなった。それでも、彼女と一緒になるのを諦めることなんてできなかったから、計画を立てたんだ」
「計画ってどんな?」
「彼女の弱みを握っている女からそのデータとそれから彼女を他の男から奪う計画だ」
薄ら笑いを浮かべながら喋るクロタキさんは痛々しい。
「上手く、いったんですか?」
「途中までは。途中で彼女が予想外の行動をしてくれてね、それに彼女の恋人も僕の計画を滅茶苦茶にしてくれたよ。でも、正直嬉しかった。彼女の行動がすごく。嬉しかった」
切れ切れになっている言葉に首を傾げてクロタキさんをじっと見つめると唇から血の気がなくなるほど強く奥歯を噛みしめているのが見てとれた。私は息を小さく吸い込んで止めた。
「クロタキさん?」
「嬉しかったのに……僕はとことん馬鹿だった。彼女を最後の最後で守れなかったんだ。誰よりも高いIQは何の役にも立たなかった」
