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変人を好きになりました

第16章 虹の匂い

 柊一が高校生の頃から誰かを馬鹿みたいに一途に想っていたのは知っていた。それがまさか古都だったなんて思いもしなかったし、図書館で思い切って声をかけてから彼女の家に行くと柊一がいて心底驚いた。

 星の数ほどもいる女性の中で俺と柊一が想う人が同じになってしまう確立は低いはずだ。でも、俺たちが古都に惹きつけられたのには古都自身に大きな原因があるんだろう。


 もし、古都が星だとしたら……と変な想像が膨らむ。
 彼女が星なら、色々な他の星を惹きつける。最初に彼女に触れた星と彼女は瞬く間に衝突し、粉砕するだろう。それなら、その粉砕された欠片のひとつでをもらうだけでも俺は幸せかもしれない。


 でも古都は星じゃないし、人間だ。それに、今はれっきとした俺の恋人。変なことを考える必要なんてないのに。


 気がついたら俺も雨でびしょ濡れになっていた。
 柊一が去り際に強い口調で言った『手加減はしない』という言葉が頭の中で響いていた。

「俺だって負けられねえよ」

 呟いた俺の声は予想以上に小さくてあっという間に雨の音に消された。

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