
変人を好きになりました
第17章 探偵と科学者
クロタキさんはドラマの中で追い詰められた犯人のように暗い顔をして俯いてしまった。
「変に疑ってるわけじゃないんです。クロタキさんが変なものを私に飲ませようとしてたなんて全然考えてませんよ? でも、なにかの薬とかなら普通に言ってくれればいいのになって」
クロタキさんが私に毒を飲ませようなんて考えじゃないことは分かっている。
「その、網膜の再生を促すものだ」
「再生……」
クロタキさんが私の塞がれている右目に目をやった。切れ長のクロタキさんの瞳は本当に涼しげで、冷たささえ感じてしまうくらいいつもは鋭いのに、今の彼の瞳からはそんな氷のような要素はない。
「すまない。まだ研究段階で治療としても認可が出ていないものだから病院で堂々と飲ませるわけにはいかなかった。この話は聞かなかったことにしてこれからはしっかり飲んでほしい。信じてほしい」
もしかして、クロタキさんが最近研究していたのはその薬のことだったのか。だとしたら……こんなに嬉しいことはない。
私のためにそんな非合法なことまでしてくれるなんて、クロタキさんは一体どうして私の怪我に責任を感じているというのだろう。クロタキさんが原因で事故に巻き込まれたとか?
未だしっかりとした事故の詳細を聞かされていない私にはクロタキさんの心情を察することができない。
そこに彼自身の好意という感情がなくても私のために行動してくれているクロタキさんの姿を想像しては胸が熱くなった。
「私、今までもしっかり飲んでましたよ。ちょっと苦いのはどうにかならないかなあって思ってたんですけど」
私は誤魔化し笑いをするとクロタキさんは目を見開いた。
何か分からない怪しい液体だと分かっていながらそれを全部飲み干すなんて馬鹿な奴だと思われてしまうに決まっている。
ひかれてしまうのではないかという私の重いとは裏腹にクロタキさんは私の左手をベッドの脇から握った。ひんやりとしたその手は大きくて骨ばっていて私の手をすっぽりと包み込んでくれた。
一方、私の手はクロタキさんに握られた瞬間にその部分から異常なほどの熱を持って、汗まで染み出てきた。
「変に疑ってるわけじゃないんです。クロタキさんが変なものを私に飲ませようとしてたなんて全然考えてませんよ? でも、なにかの薬とかなら普通に言ってくれればいいのになって」
クロタキさんが私に毒を飲ませようなんて考えじゃないことは分かっている。
「その、網膜の再生を促すものだ」
「再生……」
クロタキさんが私の塞がれている右目に目をやった。切れ長のクロタキさんの瞳は本当に涼しげで、冷たささえ感じてしまうくらいいつもは鋭いのに、今の彼の瞳からはそんな氷のような要素はない。
「すまない。まだ研究段階で治療としても認可が出ていないものだから病院で堂々と飲ませるわけにはいかなかった。この話は聞かなかったことにしてこれからはしっかり飲んでほしい。信じてほしい」
もしかして、クロタキさんが最近研究していたのはその薬のことだったのか。だとしたら……こんなに嬉しいことはない。
私のためにそんな非合法なことまでしてくれるなんて、クロタキさんは一体どうして私の怪我に責任を感じているというのだろう。クロタキさんが原因で事故に巻き込まれたとか?
未だしっかりとした事故の詳細を聞かされていない私にはクロタキさんの心情を察することができない。
そこに彼自身の好意という感情がなくても私のために行動してくれているクロタキさんの姿を想像しては胸が熱くなった。
「私、今までもしっかり飲んでましたよ。ちょっと苦いのはどうにかならないかなあって思ってたんですけど」
私は誤魔化し笑いをするとクロタキさんは目を見開いた。
何か分からない怪しい液体だと分かっていながらそれを全部飲み干すなんて馬鹿な奴だと思われてしまうに決まっている。
ひかれてしまうのではないかという私の重いとは裏腹にクロタキさんは私の左手をベッドの脇から握った。ひんやりとしたその手は大きくて骨ばっていて私の手をすっぽりと包み込んでくれた。
一方、私の手はクロタキさんに握られた瞬間にその部分から異常なほどの熱を持って、汗まで染み出てきた。
