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変人を好きになりました

第3章 入居者

「でも、君が期待してるようなことにはならない」
「どうしてかな」
 空良さんは黒滝さんの推理に一切否定をすることはなかったが、表情を少し変えた。

「君は彼女のタイプじゃない。それに古都さんは今時珍しくてい‥‥‥」


「きゃーーーーっ」



「古都さん?」
 急に悲鳴をあげた私に空良さんは驚いている。
「デリカシーの欠片くらい持って下さいよっ」
「恥ずかしいことか?」
 私は頭をぶんぶん上下に振った。
 黒滝さんがそれを奇妙なものでも見るような目で眺めてから続けた。

「ま、とにかく君は彼女のタイプじゃない」
「じゃあどんなのがタイプだっていうの?」

 空良さんは私に問うたのに何故だか黒滝さんが答えた。

「堀の深い男らしい顔だね。細すぎず筋肉がほどよくついた175センチ前後の知的な男性だ」

 そんなこと黒滝さんに話したことがない。
 他人の好みを勝手に話すのもどうかと思う。

「僕の顔はダメってことかあ。悲しいな」
 空良さんが肩を落とした。
「えっ。いえ、そんな。可愛い顔されてて素敵ですよ」
「でも異性として見れない」
「はい。えっ……あっ、あの…………」

 黒滝さんが上手く合いの手を入れるから思わず本音で勢いよく頷いてまった。空良さんが悲しい顔をする。

「まあいいよ。他の条件には結構当てはまってるからね。それに柊一も古都さんの好みじゃないみたいだし。背が高すぎて、男らしい顔とも言い難い顔をしてるしね」
「僕にとってなんら問題ではない」

 その瞳になんの感情も込めずそう答えた黒滝さんを見て分かった。





 私の恋は永遠に叶わない。



 彼にとって私はただの管理人。
 それ以上でも以下でもない。これまでも、そして……これからも。



「もうっ。変なこと話してないで、ご飯にしますよ」

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