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変人を好きになりました

第19章 灯台下暗し

 何か隠していることがあるのは明確ではないか。
 空良が古都さんの浴室にカメラを仕掛けるなんて真似するなんて信じたくはない。僕らしくない感情論が湧いて出てきて自分が情けなくなる。

 しかし考えてみれば空良が来てからだ。


 宿谷里香に宿谷財閥からの資金援助の件について連絡が来たのは空良が初めてこの家に来た時だった。
 渋られていた資金援助の話。これを逃がすと研究が危なかったから飛びつくように話に乗ろうと夜にも関わらず外へ出た。
 車がすぐそこに出ていて中で嬉しそうに手を振る女に若干嫌気を覚えながらも車に乗り込むと意外な言葉を聞かされた。

『日向古都。どうなってもいい?』

 全身に鳥肌が立った。何度も交際を迫られては断り続けていた女にそんなことを口に出されるとは思っていなかった。

 後はもう女の言うことにひたすら従う日々だった。
 ひたすら宿谷里香の機嫌を損なわないように振る舞う。その結果、古都さんをとことん傷つけた。部屋を出ていけと言われたとき、僕は何のためにこんなことをしているのだろうと疑問に思ったが古都さんのためでしかなかった。

 大事な彼女のヌード写真、持ってるんだけど……と媚びるような目つきで言われた。その日にはその写真を見せなかったくせに、3日後には嬉しそうに古都さんの例の写真を突き付けられた。
 空良が家に来てから3日目のことだ。
 偶然と思うには都合がよすぎはしないか。





「クロタキさん、まだ起きてたんですか。なにか飲みます?」

 一階のダイニングテーブルに頬杖をついていると風呂上りの古都さんがタオルを頭にかぶって出てきた。
 彼女の開かれた右目を見てはっとする。
 包帯で隠されていない古都さんの瞳の色が神秘的な黒色から赤褐色に変化しつつあった。

「なんかかっこいいでしょ」
 僕の視線に気づいたのか舌を出して笑う古都さんを見ているのが辛くて視線を外したくなった。
 でも、ここで顔を背けたら古都さんがどんなに傷つくだろうかと想像してやめた。

 椅子から立ち上がって古都さんへと歩みをすすめる。

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