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変人を好きになりました

第20章 思い違いの脱走

「手術すれば、治る可能性もあるけれど……」
「先生。はっきり言って下さい。私の右目の視力が回復することはもうないんですよね?」

 事実を知りたいだけ。私は淡々と目の前にいる白衣をきた眼科医に聞く。

「難しいと」
 少し言いよどんでから私の目をしっかりと見た先生は眉間に皺を寄せていた。手術にも人によって向き不向きがある。私の眼球はもともと丈夫に作られていないらしく、どの手術もリスクが高い。

「じゃあ、悪化が止まるのを待つだけですか?」
 先生を責めているわけでは決してないのに、結果的に先生をさらに険しい顔にさせてしまった。
「定期的な観察と、自然治癒に頼るしか今のところ方法は」
「それなら」



 私の提案に先生は渋々といった様子で頷いた。


「お大事に」


 帰り際にかけられた声に私は精一杯の笑顔で応えた。
「ありがとうございました」




 さあ。
 まず何から始めようか。

 大きな大学病院のつるつるした床を歩く。そうだ。まずは人探しからだ。信頼できそうな適任の管理人を見つけなくては。

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