
変人を好きになりました
第20章 思い違いの脱走
社長が立ち止まって私は目の前にある建物を見上げた。
「たか……」
高すぎて一番上のほうが日が沈みかけている空に突入しているみたいに見える。
こんな高層マンションに足を踏み入れる時が来るなんて思ってもみなかった。
「ここからは、プライベートだよ。古都さんももっと気軽にして」
マンションのゲートをくぐると社長はにこやかに笑って私を振り返った。
私が社長の秘書であることは24時間変わりないのではなかったのだろうか。
「仕事場では社長、会社を出たら社長とは呼ばないでくれ。いいかな?」
「えっと、宿谷さん?」
「合格」
社長の大きな手が私の頭を撫でた。犬になったような気分だ。
エントランスホールに入るとカウンターにいる女性が二人そろって頭を下げる。
「おかえりなさいませ。宿谷様、日向様」
「部屋の用意はできた?」
「はい。させていただきました」
「ありがとう」
嘘みたい。もう私の名前を知ってるなんて。私の知っているマンションとは何もかも違う。
ホテルよりも豪華なマンションってどういうことだ。
ホールには金色の縁どられたエレベーターとなぜかエスカレーターもついている。そもそもエントランスホールに黒皮の高そうなソファが何個かあったり、水がずっと湧き出ている噴水があることすら私には信じられない光景だった。
「社長、こんな所に」
「こら。社長はやめてくれと言ったよ」
うっかり口にしてしまうと社長……いや、宿谷さんは顔をわざとくちゃくちゃにしかめて見せた。元の顔が異常に整っているからそんな顔をして見せたって綺麗だと思ってしまう。
「宿谷さん、こんなすごいマンションに住んでるんですか?」
「住んでるね」
他人事のように宿谷さんは軽く頷いた。
宿谷さんの言葉を聞いてエレベーターの前に立って扉を開けてくれていた受付の女性は不思議そうな顔をして私を見た。それから宿谷さんを見て、長い睫をばたばたとはためかせる。
宿谷さんは何も気づいていないのか、気にしていないのか全く反応をしない。
エレベーターに乗り込み、女性もエレベーター案内をするため乗り込む。
「たか……」
高すぎて一番上のほうが日が沈みかけている空に突入しているみたいに見える。
こんな高層マンションに足を踏み入れる時が来るなんて思ってもみなかった。
「ここからは、プライベートだよ。古都さんももっと気軽にして」
マンションのゲートをくぐると社長はにこやかに笑って私を振り返った。
私が社長の秘書であることは24時間変わりないのではなかったのだろうか。
「仕事場では社長、会社を出たら社長とは呼ばないでくれ。いいかな?」
「えっと、宿谷さん?」
「合格」
社長の大きな手が私の頭を撫でた。犬になったような気分だ。
エントランスホールに入るとカウンターにいる女性が二人そろって頭を下げる。
「おかえりなさいませ。宿谷様、日向様」
「部屋の用意はできた?」
「はい。させていただきました」
「ありがとう」
嘘みたい。もう私の名前を知ってるなんて。私の知っているマンションとは何もかも違う。
ホテルよりも豪華なマンションってどういうことだ。
ホールには金色の縁どられたエレベーターとなぜかエスカレーターもついている。そもそもエントランスホールに黒皮の高そうなソファが何個かあったり、水がずっと湧き出ている噴水があることすら私には信じられない光景だった。
「社長、こんな所に」
「こら。社長はやめてくれと言ったよ」
うっかり口にしてしまうと社長……いや、宿谷さんは顔をわざとくちゃくちゃにしかめて見せた。元の顔が異常に整っているからそんな顔をして見せたって綺麗だと思ってしまう。
「宿谷さん、こんなすごいマンションに住んでるんですか?」
「住んでるね」
他人事のように宿谷さんは軽く頷いた。
宿谷さんの言葉を聞いてエレベーターの前に立って扉を開けてくれていた受付の女性は不思議そうな顔をして私を見た。それから宿谷さんを見て、長い睫をばたばたとはためかせる。
宿谷さんは何も気づいていないのか、気にしていないのか全く反応をしない。
エレベーターに乗り込み、女性もエレベーター案内をするため乗り込む。
