
変人を好きになりました
第20章 思い違いの脱走
エレベーターに表示された階のボタンの数に驚きながらも、最上階に着くのを待つ。最上階か……もうすご過ぎてなにがなんだか分からなくなってきてしまった。
「宿谷様、日向様、どうぞ」
女性の凛とした声に押されるようにしてエレベーターを降りる。私が降りる前に女性に呼び止められた。
「日向様、枕は数種類ご用意させていただいておりますがもしお気に召しませんでしたらすぐに受付まで仰って下さい」
枕が数種類用意させている意味が分からない。座布団を枕にしたって構わないくらいなのに。
「ありがとうございます」
恐縮しながら応えると綺麗に分けられた前髪の下にある瞳を好奇心で輝かせ女性が耳打ちした。
「宿谷様は先ほど住んでいると答えられましたが、このマンションのオーナーは宿谷様でいらっしゃるんですよ」
「ええっ!?」
そのことでさっき不思議そうな顔をしていたのかと納得した。宿谷さんはどれだけ浮世離れした人なのかと驚愕する。さっきから言っていた『私のマンション』って所有しているって意味だったなんて。
私があまりに大きな声を出したので、宿谷さんが驚いたように私を見て首を傾げた。
「では、失礼いたします」
女性は爽やかな笑みを残してエレベーターと共に下へ降りていった。
「古都さんどうしたんだい?」
「な、なんでも」
「それならいいんだけど。どうぞ、入って」
宿谷さんの人差し指が大きなドアの傍についた黒い機械に当てられたと思ったらカチャリと音がしてドアが開いた。
「うわ。広すぎないですか?」
「そうかな」
いや、どう考えても広い。
マンションなのにあの家の1階と2階を含めてもまだ足りないくらいの面積がある。
大きな玄関でパンプスを脱ぐと長い廊下を歩く。
「古都さんの部屋はここ。必要なものは全てそろえてあるけど、足りなかったら言って」
そう言って廊下の左手のドアを開けると完成された部屋が登場した。誰かが住んでいるんじゃないかと思うくらい物がきちんと詰め込まれている。
ベッドにはなぜか天蓋がついているし、硝子でできたスケルトンの机の上には本が数冊置かれていた。読みたかったお気に入りの作家の新作も積まれていて目を丸くする。
クローゼットは元から開けられていて、シンプルな服や可愛らしい華やかなものまで全て揃っていた。どれも高そう……と怖くなってしまう。
「宿谷様、日向様、どうぞ」
女性の凛とした声に押されるようにしてエレベーターを降りる。私が降りる前に女性に呼び止められた。
「日向様、枕は数種類ご用意させていただいておりますがもしお気に召しませんでしたらすぐに受付まで仰って下さい」
枕が数種類用意させている意味が分からない。座布団を枕にしたって構わないくらいなのに。
「ありがとうございます」
恐縮しながら応えると綺麗に分けられた前髪の下にある瞳を好奇心で輝かせ女性が耳打ちした。
「宿谷様は先ほど住んでいると答えられましたが、このマンションのオーナーは宿谷様でいらっしゃるんですよ」
「ええっ!?」
そのことでさっき不思議そうな顔をしていたのかと納得した。宿谷さんはどれだけ浮世離れした人なのかと驚愕する。さっきから言っていた『私のマンション』って所有しているって意味だったなんて。
私があまりに大きな声を出したので、宿谷さんが驚いたように私を見て首を傾げた。
「では、失礼いたします」
女性は爽やかな笑みを残してエレベーターと共に下へ降りていった。
「古都さんどうしたんだい?」
「な、なんでも」
「それならいいんだけど。どうぞ、入って」
宿谷さんの人差し指が大きなドアの傍についた黒い機械に当てられたと思ったらカチャリと音がしてドアが開いた。
「うわ。広すぎないですか?」
「そうかな」
いや、どう考えても広い。
マンションなのにあの家の1階と2階を含めてもまだ足りないくらいの面積がある。
大きな玄関でパンプスを脱ぐと長い廊下を歩く。
「古都さんの部屋はここ。必要なものは全てそろえてあるけど、足りなかったら言って」
そう言って廊下の左手のドアを開けると完成された部屋が登場した。誰かが住んでいるんじゃないかと思うくらい物がきちんと詰め込まれている。
ベッドにはなぜか天蓋がついているし、硝子でできたスケルトンの机の上には本が数冊置かれていた。読みたかったお気に入りの作家の新作も積まれていて目を丸くする。
クローゼットは元から開けられていて、シンプルな服や可愛らしい華やかなものまで全て揃っていた。どれも高そう……と怖くなってしまう。
