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変人を好きになりました

第22章 犯人探し

 今度は縋るような目で俺に問う。科学者ってのは本当に……。

 研究者というのは目に見えない事象を目に見える形にして示すことを仕事としている。それは分かる。星がある。たくさんあるなあ。という風流なことだけで終わることができないのが天文学者だ。あの星の大きさ、地球からの距離、角度その他諸々のことを理解した上で天体図に記していく。
 そういう科学者にとって目に見えない感情は天敵なのかもしれない。 

「まあ、そうだな。でも、俺の場合は失恋かも」
「恋が成就しないこと。恋の相手に拒まれること」
「傷口に塩を塗ってくれてありがとう」

 いくら辞書に載っている感情を暗記したって、柊一にまともな感情を植え付けるのは不可能らしい。それともわざとか。

「……悪い」
「え」
 柊一が謝った。 
 いよいよ何か恐ろしいことが起きそうな予感がしてきた。

「それで。分かったのか? 自分の気持ち」
 俺が取り直して聞くと柊一はひとつ黙って頷いた。
 やっとかよ。

「よかったな。これで両想いだ」
 古都の記憶が戻っても戻らなくても両想い。
「何故知っている?」
 急に柊一が鋭い声を出した。頬の赤みがさっと引き、なぜか俺を睨んでいる。なんだよ、さっきから百面相しやがってと心の中で毒づく。

「何が?」
「古都さんの記憶が戻ったことをどうして知っているんだ」
「戻ったの?」
 まさか本当に戻ってたなんて。というか、なんで俺には話してくれなかったんだ。本気で俺を疑ってんのかよ。

「知らなかったのか?」
 得意の推理をする余裕がないのか柊一は息を漏らす。
「知らなかったよ。古都、パニックになってなかった?」

 急に1年半分の記憶が戻ったら中にはパニック障害に陥って精神を病む人だっていると聞いた。古都は大丈夫だろうかと心配していた。それもあって記憶なんて戻らなければいいのにと考えることは多々あった。

「大丈夫だ。すんなり思い出して普通にしている」
「よかった……。もしかして、昨日柊一が遅かったのって古都と一緒にいたの? よく居場所が分かったね」
「少し苦労した」

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