
変人を好きになりました
第23章 共犯者の正体
少し熱くなって体を離すと目に涙をためている由佳がいた。
整った顔が歪んでいる。
「古都があの家を出て行ったのもびっくりしたのよ」
「ごめん」
「なんで教えてくれなかったの? 村井さんは行き先教えてくれないし……。婚約は嘘って本当? それに別れたとか」
「うん」
私が頷くと由佳の表情が少し明るくなった。私は首を傾げる。
「もう勝手にどっか行っちゃだめよ」
「由佳ってほんと、お姉ちゃんみたい」
言うと由佳が目を細めて私の頬をつまんだ。
「ひたーいー」
私のほっぺはすごく伸びるから、由佳はよくこうやって私で遊ぶ。由佳の頬の皮は骨に張り付いてるから面白いんだろう。
その時冷たい声が降ってきた。
「離れろ」
振り向けばそこにいるはずのない人がいた。
「黒滝さん?」
図書館になんて滅多に足を運ばない人なのに、どうして?
「古都、ひどいなあ。記憶が戻ったなら俺にも報告してほしかったよ」
しかも後ろには頬を膨らませる空良くんがいた。二人が一緒に図書館に来るなんてありえない。
それよりも、離れろなんて急に物騒な言葉。変な予感がして背中が震えた。
「……」
由佳は私の頬を優しく撫でると手を離して黒滝さんたちに向き直った。私よりも背が高い由佳を見上げると目に不穏な光が宿っている。
「由佳、こちら黒滝さん。それから、空良くんは知ってるよね。二人とも家に」
「古都さん。そんな説明は不要だ。僕たちのことはよく知っているだろうから」
私の口を遮るように淡々とした口調で黒滝さんが割って入る。
「どういうこと?」
空良くんは由佳だって図書館で見かけただろうし、雑誌やなんかでも取り上げられていると言っていたからまあ、知っていると言えば知っているのだろうけど。黒滝さんとは一度も実際に会ったことがないはずだ。由佳は時々家に来たけれど、その時はいつも黒滝さんは研究所に行っていたから。
由佳に答えを求めるように首を傾げてみても何も返事は返ってこなかった。
「あの写真は君の仕業だろ。盗撮は立派な犯罪だ」
「黒滝さん、何言って……」
黒滝さんはぴんと背筋を伸ばして立っていて、昨日の動揺しっぱなしの彼とは別人みたいだ。空良くんに目をやると眉を下げて由佳を見ていた。
整った顔が歪んでいる。
「古都があの家を出て行ったのもびっくりしたのよ」
「ごめん」
「なんで教えてくれなかったの? 村井さんは行き先教えてくれないし……。婚約は嘘って本当? それに別れたとか」
「うん」
私が頷くと由佳の表情が少し明るくなった。私は首を傾げる。
「もう勝手にどっか行っちゃだめよ」
「由佳ってほんと、お姉ちゃんみたい」
言うと由佳が目を細めて私の頬をつまんだ。
「ひたーいー」
私のほっぺはすごく伸びるから、由佳はよくこうやって私で遊ぶ。由佳の頬の皮は骨に張り付いてるから面白いんだろう。
その時冷たい声が降ってきた。
「離れろ」
振り向けばそこにいるはずのない人がいた。
「黒滝さん?」
図書館になんて滅多に足を運ばない人なのに、どうして?
「古都、ひどいなあ。記憶が戻ったなら俺にも報告してほしかったよ」
しかも後ろには頬を膨らませる空良くんがいた。二人が一緒に図書館に来るなんてありえない。
それよりも、離れろなんて急に物騒な言葉。変な予感がして背中が震えた。
「……」
由佳は私の頬を優しく撫でると手を離して黒滝さんたちに向き直った。私よりも背が高い由佳を見上げると目に不穏な光が宿っている。
「由佳、こちら黒滝さん。それから、空良くんは知ってるよね。二人とも家に」
「古都さん。そんな説明は不要だ。僕たちのことはよく知っているだろうから」
私の口を遮るように淡々とした口調で黒滝さんが割って入る。
「どういうこと?」
空良くんは由佳だって図書館で見かけただろうし、雑誌やなんかでも取り上げられていると言っていたからまあ、知っていると言えば知っているのだろうけど。黒滝さんとは一度も実際に会ったことがないはずだ。由佳は時々家に来たけれど、その時はいつも黒滝さんは研究所に行っていたから。
由佳に答えを求めるように首を傾げてみても何も返事は返ってこなかった。
「あの写真は君の仕業だろ。盗撮は立派な犯罪だ」
「黒滝さん、何言って……」
黒滝さんはぴんと背筋を伸ばして立っていて、昨日の動揺しっぱなしの彼とは別人みたいだ。空良くんに目をやると眉を下げて由佳を見ていた。
