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変人を好きになりました

第23章 共犯者の正体

「黒滝さんを脅すネタを仕込んだのも私。それで黒滝さんを古都から遠ざけようとしたの。それは大成功。それなのに、今度は村井さんが入ってきたものだからどうしようかなって思ってたんだけど。考えてる間にあなたたち全員イギリスに飛んじゃったでしょ。でもね、古都が記憶喪失になったって聞いたときは本当に」

 そこで言葉を区切って私の目をじっと見つめた。由佳の薄い唇が動く。
「嬉しかった」
 頭の中で何かはじけたように脳みそが機能を放棄した。
 空良くんが不思議な顔をして由佳をみている。黒滝さんはわずかに眉根を寄せた。

 10年以上前からの親友。
 たったひとりの親友と呼べる友達。
 一緒に出掛けては笑いあったり、喧嘩も少しはしたけれどだいたいは本当に仲がいい関係だった。
 恵まれた環境とは言い難い私のことを由佳は本当に気遣ってくれて助けてくれた。
 それがどうして?

 私の心情を読み取ったように由佳は言った。
「古都だけ幸せになろうなんて許せなかったのよ」
 口の周りの筋肉がなくなったかのように緩んで口があんぐりと開いた。瞬きを仕方を忘れて眼鏡越しに私の目は由佳を見つめた。

 それからじょじょに言葉の意味が分かると口元が閉まってきて目尻に水分が溢れ出してきた。
 頬を何筋もの滴が通る。
「古都」
 黒滝さんが心配してくれたようで、私を由佳からもっと距離を置いた所まで誘導した。

 大人しく黒滝さんの手に導かれていると空良くんが悲しそうな声を出した。
「その言い訳でいいの?」
「何言ってるの」
 由佳の声が低い。
「……そう。それならいいんだけどね」
 空良くんが何を聞こうとしているのか全く分からない。

「古都みたいなタイプ本当に苦手なのよ。いままで我慢して付き合ってあげてたのも古都の近くにいれば男が寄ってくるからよ。古都はそいうの疎いから振られた男に優しく声をかければすぐに落ちたわ」
「嘘でしょ。由佳がそんなことするはずないっ」
 何よりもそういうことを嫌っているはずの由佳だ。

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