
変人を好きになりました
第25章 日時を定めて
「こんばんは」
黒滝さんはそういうと助手席の扉を開けた。私が乗り込むとすぐに車は発進した。
運転する黒滝さんを見るのは初めてで隣りでハンドルを握っている手をまじまじと見てしまう。
細長い指で手首だって私と同じくらいの細さだと思っていたけれど、こうして見ると結構男らしい。手の甲に血管が浮き出て見えるのを目でなぞる。やや折り曲げられた腕についた筋肉の筋もよく見える。
「古都さんは腕が好きなのか?」
「わっ」
ちらりと目を向けられて体が跳ねた。私が驚く様子を見て黒滝さんはふっと笑った。
なんか悔しい。自分だけこんなにドキドキしてるなんて。
黒滝さんは私を見てドキドキしたことはあるんだろうか。不思議に思って自分の身体を見下ろした。
どこにも黒滝さんの心をつかめるような部分がないことを改めて分かって力が抜けた。
「僕はいいと思う」
「え?」
自信家の黒滝さんがすごく小さな声で呟くから運転席の方を見る。一見無表情なのによく見ると頬が少し染まっている。
「いや……。だから、自信を持っていいと思う。自分に」
「ありがとうございます」
なんてぎこちない会話だろう。でも、すごく嬉しかったし、黒滝さんが隣りで運転していて、私がそれを横目で時折ちらりと見つめることができるというのは幸せでしかなかった。
「わあ。美味しい」
「よかった」
黒滝さんは口元だけ緩めるとフォークをまた口に運んだ。
こんないいお肉食べたことがない。というか、こんな高そうなお店に連れてこられると思ってなかった。
イギリスで食事マナーの教育を受けていてよかったと心の底から思った。
それでも慣れていない場所での食事は緊張する。黒滝さんなんて卵焼きを素手で食べる癖にこういう時は本当に紳士的に上品に振る舞う。本当にずるい人。
黒滝さんはそういうと助手席の扉を開けた。私が乗り込むとすぐに車は発進した。
運転する黒滝さんを見るのは初めてで隣りでハンドルを握っている手をまじまじと見てしまう。
細長い指で手首だって私と同じくらいの細さだと思っていたけれど、こうして見ると結構男らしい。手の甲に血管が浮き出て見えるのを目でなぞる。やや折り曲げられた腕についた筋肉の筋もよく見える。
「古都さんは腕が好きなのか?」
「わっ」
ちらりと目を向けられて体が跳ねた。私が驚く様子を見て黒滝さんはふっと笑った。
なんか悔しい。自分だけこんなにドキドキしてるなんて。
黒滝さんは私を見てドキドキしたことはあるんだろうか。不思議に思って自分の身体を見下ろした。
どこにも黒滝さんの心をつかめるような部分がないことを改めて分かって力が抜けた。
「僕はいいと思う」
「え?」
自信家の黒滝さんがすごく小さな声で呟くから運転席の方を見る。一見無表情なのによく見ると頬が少し染まっている。
「いや……。だから、自信を持っていいと思う。自分に」
「ありがとうございます」
なんてぎこちない会話だろう。でも、すごく嬉しかったし、黒滝さんが隣りで運転していて、私がそれを横目で時折ちらりと見つめることができるというのは幸せでしかなかった。
「わあ。美味しい」
「よかった」
黒滝さんは口元だけ緩めるとフォークをまた口に運んだ。
こんないいお肉食べたことがない。というか、こんな高そうなお店に連れてこられると思ってなかった。
イギリスで食事マナーの教育を受けていてよかったと心の底から思った。
それでも慣れていない場所での食事は緊張する。黒滝さんなんて卵焼きを素手で食べる癖にこういう時は本当に紳士的に上品に振る舞う。本当にずるい人。
