
変人を好きになりました
第4章 変人の恋人
「空良さん、大根もちゃんと食べて。ほら」
私は隣りの串だらけの皿に大根を3つ置いた。
急に話が変わったことに空良さんは驚いたように瞬きを繰り返した。
輪切りにされた半透明の野菜を目の前に空良さんはこの世の終わりみたいな顔をして項垂れる。昨日のいかと大根の煮付けも彼が大根にはいっさい手をつけていないのに気がついていた。
「風邪予防にもいいの。味が染みてて美味しいはずだから」
「大根は……ちょっと」
こんなに食べやすい野菜を嫌う人は珍しいんじゃないかと思う。
大根を4つに箸で切って、少しからしをつけて空良さんの口に差し出す。
「じゃあ、これだけ食べれたら許してあげる」
何を許すというのだろう、自分でも分からない。
空良さんはまんまるい目を潤ませて恨めしそうに私を見つめた。
そんな顔しても私は騙されません、と心の中で呟いて睨んで見せる。
「ん……」
歯で大根を少し齧ってもぐもぐとする空良さんは本当に子供のようで可愛い。
つい頬が緩む。
「あ、食べれるかも。てゆうか、美味しい」
「本当?」
空良さんは箸に残っていた大根を一口で食べてしまった。
「うんうん。古都さんが食べさせてくれるならいくらでも食べれるよ」
「自分で食べなさい」
厳しい口調で即答すると空良さんは口を尖らせた。
結局、黒滝さんは夕食を食べに下りてこなかった。
空良さんが一緒に洗い物やテーブルの片づけをしてくれるから本当に助かった。
「こういう家事は私の仕事のうちだから、空良さんはやらないでいいのに」
「やりたいからやってるんだよ」
空良さんは絶対に良い旦那さんになるだろう。
黒滝さんはそんな台詞を私に言ったこともない。自分に不必要な行動は極力、というか絶対にしないのが彼のモットーらしいから、それも当然だろう。
カレンダーにふと目をやった。
明日の日付に可愛らしいハートがついている。そうだ、空良さんに言っておかないと。
「そうだ。空良さん、子供好き?」
「え。ええ……な、なに。急に」
泡だらけの手であたふたしだす空良さん。
私は首を傾げた。
私は隣りの串だらけの皿に大根を3つ置いた。
急に話が変わったことに空良さんは驚いたように瞬きを繰り返した。
輪切りにされた半透明の野菜を目の前に空良さんはこの世の終わりみたいな顔をして項垂れる。昨日のいかと大根の煮付けも彼が大根にはいっさい手をつけていないのに気がついていた。
「風邪予防にもいいの。味が染みてて美味しいはずだから」
「大根は……ちょっと」
こんなに食べやすい野菜を嫌う人は珍しいんじゃないかと思う。
大根を4つに箸で切って、少しからしをつけて空良さんの口に差し出す。
「じゃあ、これだけ食べれたら許してあげる」
何を許すというのだろう、自分でも分からない。
空良さんはまんまるい目を潤ませて恨めしそうに私を見つめた。
そんな顔しても私は騙されません、と心の中で呟いて睨んで見せる。
「ん……」
歯で大根を少し齧ってもぐもぐとする空良さんは本当に子供のようで可愛い。
つい頬が緩む。
「あ、食べれるかも。てゆうか、美味しい」
「本当?」
空良さんは箸に残っていた大根を一口で食べてしまった。
「うんうん。古都さんが食べさせてくれるならいくらでも食べれるよ」
「自分で食べなさい」
厳しい口調で即答すると空良さんは口を尖らせた。
結局、黒滝さんは夕食を食べに下りてこなかった。
空良さんが一緒に洗い物やテーブルの片づけをしてくれるから本当に助かった。
「こういう家事は私の仕事のうちだから、空良さんはやらないでいいのに」
「やりたいからやってるんだよ」
空良さんは絶対に良い旦那さんになるだろう。
黒滝さんはそんな台詞を私に言ったこともない。自分に不必要な行動は極力、というか絶対にしないのが彼のモットーらしいから、それも当然だろう。
カレンダーにふと目をやった。
明日の日付に可愛らしいハートがついている。そうだ、空良さんに言っておかないと。
「そうだ。空良さん、子供好き?」
「え。ええ……な、なに。急に」
泡だらけの手であたふたしだす空良さん。
私は首を傾げた。
