
変人を好きになりました
第4章 変人の恋人
チャイムの音が鳴って、私は焼いていたクッキーを具合を一度確認してから玄関を開けた。
「はいはーい」
子供たちがいることを予想して開けたその入り口にはすらりとした女性が立っていて、少しの間頭がフリーズした。
「ここに柊一さんはいます?」
先に口を開いたのはその人だった。見た目も口調もも堂々としていて、少し圧倒される。
凛とした瞳が観察するように私をじっと見つめる。
昨日の女性だ。
「はい」
と答える私の後ろから黒滝さんが出てきた。
「僕が呼んだんだ。言っておくのを忘れてた。あがって」
そう言いながら黒滝さんは玄関先にいる私を邪魔とでも言うかのようにさらりと押しのける。
なんだろう、これ。
「あ、もしかしてこの方が前に言ってた管理人さん?」
同じ人とは思えないくらい声のトーンが変わった彼女に私の頭はさらに思考停止に陥りかける。
「ああ。いいから、早く部屋に」
黒滝さんが私を彼女に見せたくないらしいのが露骨に分かる。
「そんな。恋人がお世話になってる方だもの。ご挨拶くらいさせてよ」
神経を逆撫でするその声は恋人という言葉を強調して言った。
黒滝さんは無言だ。
「宿谷里香といいます。柊一さんがお世話になってるみたいで、お話はよく聞いてます。すごくよく働く管理人さんだとか」
管理人さん、か。
そうか。私は管理人だった。
管理人。
「始めまして。日向古都といいます。黒滝さんは身の回りのことは自分でされるので私なんか役に立ってるかどうか」
こう言っておけば彼女も安心するし、黒滝さんも満足なんだろう。
もう、何も感じなくなってきた私の心は麻痺しているのかもしれない。
むしろ滑稽に思えて仕方ない。
「確かに。昨日だって柊一は夕食食べなかったから、俺と古都さんだけで食べたもんね。おでん、美味しかったなあ」
明るい声の空良さんが割って入ってきた。
「はいはーい」
子供たちがいることを予想して開けたその入り口にはすらりとした女性が立っていて、少しの間頭がフリーズした。
「ここに柊一さんはいます?」
先に口を開いたのはその人だった。見た目も口調もも堂々としていて、少し圧倒される。
凛とした瞳が観察するように私をじっと見つめる。
昨日の女性だ。
「はい」
と答える私の後ろから黒滝さんが出てきた。
「僕が呼んだんだ。言っておくのを忘れてた。あがって」
そう言いながら黒滝さんは玄関先にいる私を邪魔とでも言うかのようにさらりと押しのける。
なんだろう、これ。
「あ、もしかしてこの方が前に言ってた管理人さん?」
同じ人とは思えないくらい声のトーンが変わった彼女に私の頭はさらに思考停止に陥りかける。
「ああ。いいから、早く部屋に」
黒滝さんが私を彼女に見せたくないらしいのが露骨に分かる。
「そんな。恋人がお世話になってる方だもの。ご挨拶くらいさせてよ」
神経を逆撫でするその声は恋人という言葉を強調して言った。
黒滝さんは無言だ。
「宿谷里香といいます。柊一さんがお世話になってるみたいで、お話はよく聞いてます。すごくよく働く管理人さんだとか」
管理人さん、か。
そうか。私は管理人だった。
管理人。
「始めまして。日向古都といいます。黒滝さんは身の回りのことは自分でされるので私なんか役に立ってるかどうか」
こう言っておけば彼女も安心するし、黒滝さんも満足なんだろう。
もう、何も感じなくなってきた私の心は麻痺しているのかもしれない。
むしろ滑稽に思えて仕方ない。
「確かに。昨日だって柊一は夕食食べなかったから、俺と古都さんだけで食べたもんね。おでん、美味しかったなあ」
明るい声の空良さんが割って入ってきた。
