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変人を好きになりました

第5章 世界一のクッキー

「このクッキー美味しい。なんか、普通のと違う感じがするけど」
 空良さんは完全に子どもたちに混ざっている。

 クッキーには卵をいれていない。
 愛ちゃんは卵アレルギーがあるから、いれないようにしている。

「古都ねえ特製クッキーだからなっ」
 健太くんはヒーローのポーズを決めながら得意げに言った。



「管理人さん、さっき渡し忘れてたんだけど……え、子供?」

 その時、二階から降りてきた里香さんが嫌な顔をしながら応接間に来た。
「はい。遊びにきてて。それで、なんでしょう?」
「つまらないものですが。どうぞ」
 やけに冷たい言い方。黒滝さんの前だけで豹変するらしい。

「わざわざありがとうございます」
「あら。クッキー? でも、なんか白くって美味しくなさそう」
 ふふっと笑いながら言ってのける里香さん。

「私、お菓子作り得意じゃないんですよ」
 愛想笑いと苦笑いが混ざった笑いで軽く受け流す。
 でも、子供たちは違った。

「美味しいもんっ」
「世界一のクッキーだ!」
 顔を真っ赤にさせて怒る子供たちを見てこちらが泣きそうになる。
 空良さんは子供たちの頭をぽんぽんと撫でながら、里香さんを凝視している。あんな冷たい目の空良さん見たことない。


 そんな中、愛ちゃんは怒りもせずにクッキーをひとつ持つと、てくてくと里香さんの前へ行き、それを差し出した。
「美味しいよ?」
 首を傾げてそう言った愛ちゃんは天使に見えた……のに。




「やだ。こんな手で持たれたもの食べられないわよ。こんな肌じゃお嫁にも行けないわね。可愛そう」

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