
変人を好きになりました
第6章 行き交う想い
「空良さん、ありがとう」
「お礼を言われることなんて何もしてないよ」
明るい子供たちが帰ってしまうとなんだか寂しくなると同時にさっきの嫌な人に対する黒い感情が蘇ってきた。
「私、空良さんに止めてもらってなかったらあの人のこと叩いてた。子供たちの前で」
そしたら、あの子たちはもっと傷つくことになっただろう。
「ううん。俺もだよ。古都さんを止めることで自分も止めたんだ。あの女……」
「もうこの家に来ないでって言ったの」
空良さんが頷く。
「そしたら、黒滝さんが庇ったから、それならここから出て行って下さいって言った」
「柊一に?」
今度は私が頷いた。
「そっか。よかった」
「よかった?」
空良さんが聞き返した私の顔を見た。
「なんでも。ちょっと研究室に行って論文を出してくるね」
そう言うと、子供たちを見送ったまま早足で大通りに出て行った。
私は空良さんが見えなくなるまでぼんやり玄関の前で行きかう人を眺めてから、カーディガンを羽織っている腕が冷えるのに気が付いて家に戻った。
家にひとりでいるとなんだか寂しくなってしまった。
つい最近までここにひとりだなんて珍しいことでもなんでもなかったのに、賑やかな子供たちと空良さんの存在が急にすっぽりと抜けると一気に静かになってそわそわしてしまう。
それに、黒滝さん……。
黒滝さんがこの家を出ていくかもしれない。
いや、出て行ってほしいと思ったのは自分、そう口に出したのも自分。後悔はない……。
ただ、黒滝さんがあんな人のことを庇ったという事実が私には悲しかった。
茶色い髪の毛は綺麗に巻かれていて可愛らしく、里香さんのはっきりとしたメイクを柔らかく見せていた。
紫のアイシャドウと色っぽい口紅がすごく似合っていた。
大人の女性という言葉が相応しい見た目。黒滝さんのタイプはあんな人なのだろう。確かにすごくお似合いだ。
ふたりで並んで歩いている後ろ姿は慎重さがちょうどよくて絵になるカップルだった。私と黒滝さんがもし並んであるけば、ちぐはぐな面白い光景になるだろう。
でも、愛ちゃんにあんな酷いことを言っておきながら、黒滝さんに甘い声でありもしない言い訳をする人を私だったら好きになることはできない。
「お礼を言われることなんて何もしてないよ」
明るい子供たちが帰ってしまうとなんだか寂しくなると同時にさっきの嫌な人に対する黒い感情が蘇ってきた。
「私、空良さんに止めてもらってなかったらあの人のこと叩いてた。子供たちの前で」
そしたら、あの子たちはもっと傷つくことになっただろう。
「ううん。俺もだよ。古都さんを止めることで自分も止めたんだ。あの女……」
「もうこの家に来ないでって言ったの」
空良さんが頷く。
「そしたら、黒滝さんが庇ったから、それならここから出て行って下さいって言った」
「柊一に?」
今度は私が頷いた。
「そっか。よかった」
「よかった?」
空良さんが聞き返した私の顔を見た。
「なんでも。ちょっと研究室に行って論文を出してくるね」
そう言うと、子供たちを見送ったまま早足で大通りに出て行った。
私は空良さんが見えなくなるまでぼんやり玄関の前で行きかう人を眺めてから、カーディガンを羽織っている腕が冷えるのに気が付いて家に戻った。
家にひとりでいるとなんだか寂しくなってしまった。
つい最近までここにひとりだなんて珍しいことでもなんでもなかったのに、賑やかな子供たちと空良さんの存在が急にすっぽりと抜けると一気に静かになってそわそわしてしまう。
それに、黒滝さん……。
黒滝さんがこの家を出ていくかもしれない。
いや、出て行ってほしいと思ったのは自分、そう口に出したのも自分。後悔はない……。
ただ、黒滝さんがあんな人のことを庇ったという事実が私には悲しかった。
茶色い髪の毛は綺麗に巻かれていて可愛らしく、里香さんのはっきりとしたメイクを柔らかく見せていた。
紫のアイシャドウと色っぽい口紅がすごく似合っていた。
大人の女性という言葉が相応しい見た目。黒滝さんのタイプはあんな人なのだろう。確かにすごくお似合いだ。
ふたりで並んで歩いている後ろ姿は慎重さがちょうどよくて絵になるカップルだった。私と黒滝さんがもし並んであるけば、ちぐはぐな面白い光景になるだろう。
でも、愛ちゃんにあんな酷いことを言っておきながら、黒滝さんに甘い声でありもしない言い訳をする人を私だったら好きになることはできない。
