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変人を好きになりました

第6章 行き交う想い

「婚約者のフリって、そんなことしても平気なの?」
「うんうんっ。だって、いずれは本当に婚約者になるんだもん」

 空良くんが目をキラキラさせて私を見つめる。

「え、空良くん」
「わかってる。でも、絶対に好きにさせるから。柊一なんかよりも」

 どうして私なんかをこんなに想ってくれるのだろう。
 空良くんにはすごく感謝しているし、どんな形であれ恩返しをしたいと思っていた。
 彼を助けたい気持ちはある。
 それに、空良くんといると楽しいし、黒滝さんのことも忘れられる。
 こういう人と一緒になれば幸せになる……そう自分でも言ったことを思い出した。

 この気持ちは友達としての心地よさからくるのか、異性としての好きという気持ちなのか私にはよく分からない。

 そもそも、異性を好きになった経験がそんなにない。というか、黒滝さんにしかないかもしれない。
 まあ、そのたったひとつの初めての恋も無残に散ったのだけれど。



 私は頷いた。

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