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変人を好きになりました

第7章 古城のシンデレラ

 授賞式が終わると、ホテルに帰って一息ついた。


 婚約者として記者たちからの質問のシャワーが降ってきたけれど、空良くんが全て止めてくれたから、私は曖昧に頷いたり微笑んだりするだけだった。



「古都、本当にありがとう」
「ううん。こんな素敵なホテルに泊まれるんだから感謝したいくらい」
 古城を改装したホテルはすごく幻想的だ。小さい頃から古城に泊まるのが夢だった私は城の中を走り回らんばかりの勢いで探索していた。
 日本の高級マンションくらいの大きさのお城に使用人以外は私と空良くんのふたりきりというのがまた不思議で面白かった。

「よかった」
 空良くんが窓の外から見える光る噴水を見ながら言った。
「何が?」
「古都のその笑い声と笑顔が見れて」
「あ」

 そういえば、ここ最近笑っていなかった。
「ちょっとは元気になった?」
「……うん。空良くん、ありがとう」
 私は来ている白いワンピースの裾を持った。
 お姫様みたいなこのワンピースを着て、お城に泊まれるなんて幸せすぎる。

「そのワンピースもすごい似合ってるよ」
 空良くんがこちらを向いて微笑みかける。なんか、今日の空良くんはいつもと違う気がする。


 気のせいだろうか。
「シンデレラみたい。今だけ、だもん」
「シンデレラか……。僕と婚約してくれれば魔法はずっと解けないけどね」
 悪戯っぽく笑った空良くんは窓から離れて大きなベッドに腰掛けた。


「空良くん……」

「でも、残念。もう王子様が迎えにくる時間らしいよ」
 空良くんが言い終わらないうちに寝室の扉がノックもなしに開いた。

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