
変人を好きになりました
第9章 たまご粥
「ただいま。古都、何してるの?」
キッチンに入ってきた空良くんが面白そうに尋ねた。
何してるのって、フライパンを片手に持っているのだから料理に決まっているじゃないか。
「お料理よ」
「どうして? 専属のシェフがいるのに」
そういいながら空良くんは私の斜め後ろ、すこし離れた場所から私の調理を楽しそうに眺めているシェフのほうに目を移した。
ふっくらとしているそのシェフは空良くんの視線にびくりと反応しすぐさま謝った。
「私が頼んだの」
「うん、知ってる」
空良くんが悪戯っぽく舌を出すと、シェフが大げさに胸をなでおろした。
「俺も手伝うよ。何かできることない?」
白いカッターシャツの袖をまくりながら意気揚々と目を輝かせる空良くんを見て自然と笑みがこぼれる。
「んー。じゃあ、そこにある茹でたじゃがいもの皮剥いて」
「おっけー」
私は蓋をして蒸していたハンバーグの焼き目を確認して、ひっくり返した。
もうそろそろじゃがいもが剥けてもいい頃かと思い、流し台の前に立っている空良くんの様子を見やると、なぜか彼はまだじゃがいもの皮と格闘していた。
おかしい。
どうして3つのじゃがいもの皮を手でぺりぺりと剥くのに、そんなに時間がかかっているのだろう。残りの2つなんて完全に皮がついた状態で空良くんの手が伸びてくるときを待っていた。
「空良くんって……」
つい口を出そうになった言葉を呑み込んだ。
「なに?」
「なんでもないよ。ないです……」
あきらかに私が何を言おうとしていたのか察知しているらしい。その証拠に空良くんがすごく不機嫌な顔になった。
「俺、料理とか全然しないから」
いや、じゃがいもの皮を剥くのにそんなに高度なテクニックも普段から料理をしているというスキルも活かせるものでもない。
ただ、剥くだけなのに……。
「それでもやってくれるだけで十分だよ」
潰れたじゃがいもまみれの手がぴたりと止まる。
「それでもってどういう意味なんだよー」
空良くんの白くて柔らかそうな頬がぷっくりと膨らんだ。
「あ、いや……。その……」
不器用なことを自覚してないのか、なんなのか。いつもは可愛い性格だけど実は結構負けず嫌いで完璧主義者なのを知っているからどう弁解しようかと悩む。
キッチンに入ってきた空良くんが面白そうに尋ねた。
何してるのって、フライパンを片手に持っているのだから料理に決まっているじゃないか。
「お料理よ」
「どうして? 専属のシェフがいるのに」
そういいながら空良くんは私の斜め後ろ、すこし離れた場所から私の調理を楽しそうに眺めているシェフのほうに目を移した。
ふっくらとしているそのシェフは空良くんの視線にびくりと反応しすぐさま謝った。
「私が頼んだの」
「うん、知ってる」
空良くんが悪戯っぽく舌を出すと、シェフが大げさに胸をなでおろした。
「俺も手伝うよ。何かできることない?」
白いカッターシャツの袖をまくりながら意気揚々と目を輝かせる空良くんを見て自然と笑みがこぼれる。
「んー。じゃあ、そこにある茹でたじゃがいもの皮剥いて」
「おっけー」
私は蓋をして蒸していたハンバーグの焼き目を確認して、ひっくり返した。
もうそろそろじゃがいもが剥けてもいい頃かと思い、流し台の前に立っている空良くんの様子を見やると、なぜか彼はまだじゃがいもの皮と格闘していた。
おかしい。
どうして3つのじゃがいもの皮を手でぺりぺりと剥くのに、そんなに時間がかかっているのだろう。残りの2つなんて完全に皮がついた状態で空良くんの手が伸びてくるときを待っていた。
「空良くんって……」
つい口を出そうになった言葉を呑み込んだ。
「なに?」
「なんでもないよ。ないです……」
あきらかに私が何を言おうとしていたのか察知しているらしい。その証拠に空良くんがすごく不機嫌な顔になった。
「俺、料理とか全然しないから」
いや、じゃがいもの皮を剥くのにそんなに高度なテクニックも普段から料理をしているというスキルも活かせるものでもない。
ただ、剥くだけなのに……。
「それでもやってくれるだけで十分だよ」
潰れたじゃがいもまみれの手がぴたりと止まる。
「それでもってどういう意味なんだよー」
空良くんの白くて柔らかそうな頬がぷっくりと膨らんだ。
「あ、いや……。その……」
不器用なことを自覚してないのか、なんなのか。いつもは可愛い性格だけど実は結構負けず嫌いで完璧主義者なのを知っているからどう弁解しようかと悩む。
