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変人を好きになりました

第10章 人魚姫


「……あっ」

 空良くんの顔が私の首に埋められた時、体が麻痺してしまいそうなくらい甘い痺れが駆け抜けて、下腹部に自然と力がはいった。
「どうした」
 原因を自分で作っておいて何もしてないような顔で私を見た。少し、口の端が上がっている。

「あの、なんか変な感覚」

「こうやったら?」

 そう言いながらさっきと同じように私の首筋を舌でつうとなぞる。私はまた体をぴくんと跳ねさせてしまう。どうしてか息が荒くなる。
 じわりと下着が湿らせるのを感じた。

「んあっ。それ、変なの……。ここ、苦しくなるのお」
 どうしてこんな甘い声が出るんだろう。自分じゃないみたいで怖い。
 空良くんの柔らかい茶色の髪がしゃっしゃと私の肌にあたってこそばゆいのに、それ以上に空良くんの顔が首元にあるというだけでもどかしいような切ないような嬉しいような気持ちになる。


「それ、感じてるんだよ。古都は本当に何も知らないんだね」
「だって……」
 空良くんは私の髪を撫でて、私を見つめた。

「言ってみ。感じてる、って。ほら」
 私は黙って首を振った。
「言うまで、やめないよ」
 空良くんがまた首に舌をはわせる。とんがらせているであろう生ぬるい舌が寄り道をしながら首筋をなぞる。

「やあ……っ、か、んじてる」
「どこが?」
 言ったのにやめてくれない。これ以上されたらおかしくなってしまいそう。
「くびっ、首があ……」
「誰の何で」
 間髪入れずにくる質問の意味を理解するには襲いくる官能的と言うであろう刺激と闘う必要があった。
「空良くんの、し……舌で首なめられて、あっ。感じて、るの」

 口にすると厭らしくて途端に顔が熱くなった。
 空良くんはやっと舌をしまってくれた。
 でも、その表情はさっきよりもむしろ数倍も興奮しているようだった。

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