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変人を好きになりました

第11章 純白のドレス

 私はそっとテレビの電源を消した。
 不思議と心は落ち着いていた。むしろすっきりしているような気すらした。

 よかった。

 しいていえばそんな言葉であらわされる私の気持ち。
 どういう意味なのかは自分でもよく分からないし、分かるために分析をしようという気も起きない。ただ、外からの情報に逆らうことなく受け入れる。どこまでも受動態でいることに徹してしまったような私の心身。


 きっとこれでいいのだ。
 私には最近すごく著名になった頭が良くて優しくて星に詳しくて私のことを想ってくれるかっこいい男の子がいるのに、これ以上なにを高望みするの? そう、どこかで誰かに言われている。



 空良くんの読書が終わるまで、私は裁縫でもしておこう。
 私はソファから立ち上がった。

 どれくらい経っただろう。小さい作業が意外と嫌いじゃない私は気が付くと何時間でも工作のようなことをしていれる。出来上がった作品は決して上手いとは言えないが。
 自室として使っている小さな部屋は城の真ん中、寝室のひとつ上の階にあって出窓のようになっているからカーテンを開けると空が綺麗に映る。
 ゆったりと前後に動く肘掛け椅子から出来上がった黄色いフェルトでできた星を手にしたまま立ち上がると後ろから動きを止めるように腕が伸びてきた。


「きゃああ」

 訳が分からず声を上げると、今度は口を手で覆われた。
「んーーーっ」

 肩に腕を回され完全に動けなくなると、背後でシュルっと絹のすれる音がして私の目をネクタイらしきものが塞いだ。口元から手を離された代わりに今度は両手首を後ろでがっしり掴まれる。

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