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変人を好きになりました

第11章 純白のドレス

「誰、何? 離して!」
 相手は何も答えない。
 誰が何のためにこんなことを? 視界を塞がれると不安が一気に押し寄せてきた。


「ひっ」
 突然、首筋に湿った息を感じた。
 そしてぬるい舌らしきものが首を下品に舐める。

「んっ、や……。空良くん、助けてーー」

 気付くと空良くんの名前を叫んでいた。
 誰がこんなこと?

 首にそわされていた舌がどんどん上に上がってきて唇すれすれの所でとまった。
 空良くんが大切にとっておいてくれたキス、こんな得体のしれない変態に奪われてたまるかと私は精一杯の抵抗を試みようと体を思いっきりねじった。




「嬉しい」



「へ?」
 その声は紛れもなく私の恋人のそれだ。
「驚かしてごめん。ちょっとした悪戯のつもりだったのに古都の反応が良いからついやりすぎちゃった」
 するっと目隠しが解かれ、手も解放されると悪戯がばれた子供みたいな顔をした空良くんがぼんやりと目に映った。

「もお! 怖かったじゃない」
「本当にごめん。古都、でも嬉しかったよ」
「なにがよ!」

 空良くんが出窓に腰掛ける。

「古都が俺のこと呼んでくれて」

 私は立ち上がって空良くんの隣りに座った。出窓が広くてふたりがちょうど座れる。

 そうだ。
 空良くんは子供みたいな人だ。
 無邪気で明るくてその存在だけで周りを変える力を持っている。太陽みたいな人だ。
 レイプまがいのことをされそうになったのにそんなことを思わせてしまうのも空良くんの憎めない不思議な雰囲気のせいだろう。
「酷いよ、空良くん。最低」
 私がそう言うと空良くんは一度私と目を合わせてすぐ逸らした。

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