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変人を好きになりました

第11章 純白のドレス

「地味で生真面目」

 空良くんの言葉が蘇る。
「でも最近の山羊座の人たち見てるとそんなことないよね。不思議だなって思ってたけど、たぶんそれは社会がすごい勢いで変化したから秩序を守るような真面目さを発揮できないんだよね。古都はそういう社会の変化を肌で感じ取ったから図書館っていうあまり変化のない所で働くようになったんじゃないかな」

 真面目、学生の頃から言われ慣れているワード。自分では真面目かどうかなんてよくわからない。

「ただ山羊座の特徴として自分を抑制するコントロール力の強さがある。それも内側にもの凄い熱いものを持ってるからそれを抑えるために分厚い殻が必要なんだ。思い当たることは?」

 私は首を横に振ったと思う。
 青春小説なんかであるような熱血教師にはできるだけ近寄りたくないし、熱い人とは距離を置きたいと思っている自分に情熱なんか微塵もないと思っていた。

 しかし、よくよく考えるとそのマグマのようなものがそれかもしれない。



「ねえ、空良くん」
「ん?」
「思ったんだけど、そういう星座別の性質みたいなものって誰にでもあてはまることじゃない? 真面目って言ってもある分野では真面目だったり、自分を抑制することなんてほとんどの人がやってるでしょ」

 私がそう問うと空良くんはふいを突かれたようにキョトンとしてから、また大胆に笑った。

「気付いちゃった? さすが古都だな。でも、そういうことを考えてわざわざ疑問にして言っちゃう所が真面目なんだよ。確かに誰にでもあてはまることが書いてあったりする。それって当たり前だよ。みんな同じ人間なんだから感情とか性質がかぶらない方がおかしい」
 うんうんと頷いてみせる。
 空良くんは続けた。

「その中で自分の星座の性質を知って、自分のベースはこれなんだって思うことが占星術の醍醐味なんだ。あーあたってる、とか微妙だなって思って理想の自分に近付くにはどうしたらいいんだろうって考えることが本当の狙いなんだ。あの本にだって10人いたら10通りの、100人いれば100通りの性質があるから、それを12星座にまるまま当てはめるのは無理だって言ってるしね」

 納得したような納得できないような返事に私は曖昧に頷いた。

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