テキストサイズ

変人を好きになりました

第12章 スターサファイア

 そういいながら空良くんがつまみあげたシルバーリングには実際に見たことがないほど堂々としたサファイアが乗っていた。真っ青なその石は光をうけて星のような輝きを放っていた。
 スターサファイアだ。

 どこから見ても美しく、輝きを放っているその鉱物にぎょっとしつつ空良くんの顔を見る。


「だめ?」
 う。その顔は反則なのに。いつも太陽みたいな空良くんが顔を真っ赤にして目を潤ませるとこっちがたじたじしてしまう。
 いつもならなんでも言うことを聞いてしまうところだけど、こればかりは……。

「これ、どういう意味?」
「古都が好きなんだ。大好きすぎて、こんなに愛しく思ったの古都が初めてなんだ。ずっと、ずっと一緒にいたい」

 それって……。

「婚約指輪とかそんな堅い感じじゃないんだ。ただ、古都にこれをつけてほしいと思ったから。重たかったら外してくれても構わないし、フォーマルな場だけで使ってくれるだけでいいから」

 そんなことを言いながら空良くんは自然な動作で私の右手の薬指に指輪を通そうとする。

「待って! そんな高価なものもらえないよ」
「何言ってるの。古都は俺のせいで生活が奪われたんだよ。図書館だって本当は好きだったんだろ。平気な顔してても分かるよ。これはそのおわびの一部にもならないよ」


 私の手をとると空良くんが軽く手の甲にキスをした。
 それで終わると思った私を裏切り、そのまま唇を指に滑らせる。小指から親指にいたるまで入念に口付けが施され、薬指の先端を空良くんの赤い舌でチロチロと舐められる。

「やっ、くすぐったいよ……んっ」
 時折私の顔を見ながら空良くんは本当に愛しそうに私の指を舐める。恥ずかしくて目をつむった。


「隙あり」
 語尾に音符がつきそうなくらい上機嫌の言葉と一緒に薬指が重くなった。

「あ」

 私の薬指には指輪と、それから空良くんのいたずらっ子の顔があった。
「ね、いらなくなったら取っちゃっていいから。古都、指輪とか全然なかったし、普通にアクセサリーとして使って」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ