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変人を好きになりました

第12章 スターサファイア

「もう。わかった。ありがと」
 怒ってるんだか感謝してるんだか分からない反応に空良くんはおかしそうに笑った。

 本当に無邪気な人。
「空良くん」
 私の呼びかけに腕時計を確認していた空良くんが顔をあげた。
 空良くんの体に抱きつく。
 ふわりと優しい香りに包まれて深く安心してしまった。
 優しいこの人を悲しませたくない、この人の役に立ちたいと思う。でも、どうやって伝えればいいのか分からない私は空良くんの胸に顔を埋めて呟くしかなかった。



「好き」



 途端に空良くんの身体が硬直して、私のお腹にさっきまではなかった堅いものが当たった。
「ちょ、ちょっと……離れて」
 私は首を傾げながら離れようとした。
「あ! やっぱ、このままっ。じっとしてて、おさまるまで」
「何が?」
 空良くんの顔を見上げるように頭を傾けると空良くんは真っ赤になっていた。空良くんは私から顔を逸らした。
「またそうやって煽るような……。本当に古都はなんて言うか……あーっ、もう! あいつらの結婚式なんて行かないでここで古都と……」
「え? 式行かないの?」
 ドレスまで用意したのに? そう畳み掛けたいのをぐっと我慢した。

「はあ」
 空良くんの意味不明の溜め息が返ってくるだけで、それから数分の間私は空良くんに抱きついたままの状態でいた。



 空良くんの胴に回された右手の薬指にはドレスのミントグリーンと協調するような青い爽やかなスターサファイアが輝いていることだろう。私の一番好きな色。青色の宝石が。

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