
変人を好きになりました
第12章 スターサファイア
私が奈緒さんのほうを振り返ると、私の様子を窺うように大きな目が私を見ていてどきりとした。
「里香さんと会ったことあるの?」
私はクッキーと子供たちに酷いことを平気でしてのけた彼女の姿を思い出して勝手に顔がこわばるのを感じた。
「少し……」
「あら。どうだった? いい人そう?」
とてもじゃないけれど首を縦に振ることはできない。
横にぶんぶんと思いっきり首を振りたい衝動をこらえて首を傾げて見せた。
「ほんの少ししかお会いしてないので、よく分からないんです。でも、黒滝さんが選んだ人なんだから素敵な人なんだろうなって」
口角を吊り上げてそう言うと、奈緒さんが真顔でじっと私の顔を見た。
なにか見透かされそうで怖い。けれど、見抜いてほしいと思う自分もいる。
「……そう。古都さん、柊一の仕事詳しいこと分かる?」
「研究所からの依頼を受けて研究調査するってことぐらいです」
「まあ、そうなんだけど。未解決の国家規模の事件とか汚職の証拠とかいろいろ大きな声で言えないようなことも調べさせられるわけよ」
私は頷いて続きを促した。
「そういうの調べるには人脈が大切で、柊一ああ見えて各国の要人には結構気に入られてるの」
「はあ」
私は奈緒さんが何を言おうとしているのか分かって目を伏せた。
「宿谷里香さんのお家は有名な財閥で議員も多く輩出してるわよね。柊一は人脈づくりの一環で結婚決めたんだと……」
「奈緒さん」
彼女の言葉を遮るように声を張り上げる。
驚いたように私を見る奈緒さんに私はにっこり笑ってみせた。
「黒滝さんが決めたことです。理由がどうであれ私は祝福します」
笑顔で細めた目がぐらぐら揺れて奈緒さんに気付かれそうで私は奈緒さんがつまんでいたぶどうを口に運んだ。
高級であろうその果実も今の私の舌は味覚を拒否しているらしく噛んでも噛んでもみずみずしい果汁が口にあふれ出るだけで私はそれを無理矢理飲み込んだ。
奈緒さんは目を優しく細めてから私の口元を指で直接ぬぐった。
まるで小さな子供になったような気分。
「空良が惚れるのも分かるわ」
なぜか嬉しそうな奈緒さんを見ていると自分が正しい選択をしたのだという気がしてきた。
「里香さんと会ったことあるの?」
私はクッキーと子供たちに酷いことを平気でしてのけた彼女の姿を思い出して勝手に顔がこわばるのを感じた。
「少し……」
「あら。どうだった? いい人そう?」
とてもじゃないけれど首を縦に振ることはできない。
横にぶんぶんと思いっきり首を振りたい衝動をこらえて首を傾げて見せた。
「ほんの少ししかお会いしてないので、よく分からないんです。でも、黒滝さんが選んだ人なんだから素敵な人なんだろうなって」
口角を吊り上げてそう言うと、奈緒さんが真顔でじっと私の顔を見た。
なにか見透かされそうで怖い。けれど、見抜いてほしいと思う自分もいる。
「……そう。古都さん、柊一の仕事詳しいこと分かる?」
「研究所からの依頼を受けて研究調査するってことぐらいです」
「まあ、そうなんだけど。未解決の国家規模の事件とか汚職の証拠とかいろいろ大きな声で言えないようなことも調べさせられるわけよ」
私は頷いて続きを促した。
「そういうの調べるには人脈が大切で、柊一ああ見えて各国の要人には結構気に入られてるの」
「はあ」
私は奈緒さんが何を言おうとしているのか分かって目を伏せた。
「宿谷里香さんのお家は有名な財閥で議員も多く輩出してるわよね。柊一は人脈づくりの一環で結婚決めたんだと……」
「奈緒さん」
彼女の言葉を遮るように声を張り上げる。
驚いたように私を見る奈緒さんに私はにっこり笑ってみせた。
「黒滝さんが決めたことです。理由がどうであれ私は祝福します」
笑顔で細めた目がぐらぐら揺れて奈緒さんに気付かれそうで私は奈緒さんがつまんでいたぶどうを口に運んだ。
高級であろうその果実も今の私の舌は味覚を拒否しているらしく噛んでも噛んでもみずみずしい果汁が口にあふれ出るだけで私はそれを無理矢理飲み込んだ。
奈緒さんは目を優しく細めてから私の口元を指で直接ぬぐった。
まるで小さな子供になったような気分。
「空良が惚れるのも分かるわ」
なぜか嬉しそうな奈緒さんを見ていると自分が正しい選択をしたのだという気がしてきた。
