
変人を好きになりました
第13章 見えた光と
――オレンジだ。
一面暖かなオレンジ色の世界。眩しくないと言えば嘘になるけど、心地のいい眩しさ。
身体もなんだか温かくて落ち着く。ああ、気持ちいい。
今、この体は雲の上で寝転がって日向ぼっこしてるのかもしれない。そうじゃないとこの天国みたいな幸福は味わえないだろう。
はあ。
あれ……。少し暖かすぎるかもしれない。だんだんと体中を覆う皮膚がじんわりと湿ってきた。
暑い。と思っていたらひんやりとした何かが身体を拭く。柔らかな肌触りのそれが肌をゆっくりなぞる。綺麗にされた肌は空気に触れて適度な乾きを得る。さっきの日向ぼっこを天国と言ったけど、こっちは紛れもない極楽だ。
ずっと続けばいいと願ってしまう。
口元が自然と緩む。
「全く、どんな夢を見てるんだ。幸せそうな顔して……そんな顔するくらいならさっさと目を覚ませ」
誰かのぼやく声が聞こえる。ぶっきらぼうなその声に芯が震えた。
誰の声なのだろう。分からないのに、身体の奥のほうから幸せが溢れ出してくる。
「ん……」
喋りたいのに、声が思うように出ない。くぐもった唸り声みたいになってしまう。
それなのに、身体を拭いてくれた人が良きを呑む音が聞こえた。
「古都さん? 聞こえるか?」
その人が私の手を布団から出して優しく包んでくれた。
返事の代わりにその手に少し力を加える。声の主を見たくて目を開こうとしてみる。
開かない。
瞼に何百キロもの重りがついているのではないだろうか、と疑いたくなるくらいびくともしない。
「あ……あか」ない。あかないと言いたいのに……。
その時バタバタと慌ただしい足音がいくつも聞こえた。
「日向さーん。聞こえますかー」
耳元で別の人の声が聞こえる。その隣りからは何人かの高い声がする。
「先生、これ……」
高い声。女性の声だ。
すると誰かの手によって低く上体を支えられ、締め付けられていた頭部を解放するように何かが頭から顔にかけての何かを奪い取って行った。
