テキストサイズ

身代わりH

第2章 *思い出

-お兄ちゃんのことを“男の子”として見るようになったのは、その時からだったと思う。



-そして、周りが見えたのと同時に、自分とお兄ちゃんの置かれている立場がくっきりと分かれているのに気付いた。




-かたや、成績優秀、スポーツ万能の有名人。



-かたや、全てが平凡な…どちらかというと地味めな妹。


-あたしがこんなだから、お兄ちゃんは優しくしてくれないのかな-…。



-そうして、お兄ちゃんとの距離が徐々に開いていって、あれは、あたしが中学3年の-そう、去年の夏休み。



高校の受験勉強の息抜きで、友達と出掛けた地元の花火大会。



偶然にもその時好きだった男の子のグループと合流できたあたしは、ウキウキだった。




だけど…、慣れない草履を履いて土手を歩き回ったあたしの足は、花火のクライマックスを迎える頃には限界だった。



「雅、大丈夫?」



心配してくれてる女友達の向こうで、男の子達が振り返って見ていた。



けど、お目当てだった子と目が合ったと思ったら、逸らされた。



「うん…ごめん」




そうして何度か立ち止まらなければまともに歩けないあたしは、どんどん皆から離されていって、ついにはぐれてしまった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ