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身代わりH

第2章 *思い出

「最悪……」



-足痛いし。



…ここ…どこなんだろう。



見物客でにぎわう土手の上、皆についてくのが精一杯で、自分がどこまで来てしまったのかわからなかった。



せっかく着た浴衣も、靴擦れの痛みをかばって変な歩き方をするうちに着崩れてるし。



夜空にはクライマックスを告げる大輪の花が豪快に音を立てていた。



耳に響く轟音と、人々の歓声の中、あたしは一人だった。



-どうしたらいいの…?
もう、やだよ…。



一人ぼっちで疲れ果てたあたしの目尻に、涙が滲んだ、その時。



「-雅!」



人混みを掻き分け、息を切らせて駆け寄ってきたのは-…お兄ちゃんだった。

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