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身代わりH

第2章 *思い出

お兄ちゃんに心臓の音を聞かれたくなくて、無理に体を浮かせたりして。



だけどそれはお兄ちゃんの首を締め付けてたみたい。


「…く、苦しいっ!」


「-え?あ、ごめん!」


「オレを殺す気か」


「違うもんっ」


「ったく、ただでさえ重くて大変だってのに…暴れると、置いて帰るぞ」


「やだーっ!」


…お兄ちゃんの背中で揺れながら、他愛のないやり取り。



それだけで、こんなに嬉しい気持ちになれるなんて、知らなかった。



お兄ちゃんと一緒にいるのが、こんなに楽しくて幸せだなんて。



さっきまで好きだった人にも感じたことのない、優しい気持ちが溢れてくる。



あたし-…もしかして……。


-それから、お兄ちゃんへの思いに気付くまで、時間はかからなかった。

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