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身代わりH

第3章 *家に帰ると・・・

***

『楠』の表札の前であたしは立ち止まった。


「…はぁ…」



この門を、お兄ちゃんもさっき通ったのかな?…美紅って彼女と一緒に。



自分の家に帰るのが、こんなに憂鬱だなんて。



あたしはもう一度溜息をつきながらドアを開けた。



-そこには、見慣れた学生靴と、ハルタの茶色いローファー。



…やっぱり、呼んだんだ…。



あたしは更に気分が重たくなるのを感じながら、音を立てないようにゆっくりと扉を閉めた。



そのまま静かに玄関にあがり、鞄を持ったまま台所でマグカップに午後ティーを注ぐ。



-お兄ちゃんは、彼女を家に呼ぶ時、あたしが家に帰ることを極度に嫌がる。



でも-…こうして物音を立てずに、帰った事を気付かせないようにすれば、怒られない。



あたしはいつものように爪先立ちで静かに階段を昇った。

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