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身代わりH

第21章 *消えない温もり

大きな机に腰掛けた広い背中は間違えようもなくお兄ちゃんで、その正面に立った彼女…前にうちにも来てた美紅って人…の腰を掴んで抱きしめていた。




「…んっ…」




お兄ちゃんは彼女の言葉には何も答えずに、くるくるの巻髪の中に差し入れた手で強引に顔を引き寄せた。




お兄ちゃんが顔を横に傾け、粘着質な音があたしの耳にも聞こえてくる。




-ドクン、ドクン、ドクン…。


…い…や…っ。


…こんなのっ…見たくない!




鼓動は早鐘のように嫌な音を立てて鳴り響き、泣きすぎて涸れてしまったはずの涙腺が一気に緩んだ。




「…っっ!」




あたしは胸に抱えたものをぎゅっと抱え直し、そこから立ち去ろうとした。




その時。




-ギシッ。

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