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身代わりH

第1章 *私とお兄ちゃん

…ほんとに、なんでもできちゃうんだなあ…。



「こら!楠雅!妹のあんたまで見とれてどうするの!」



突然、名前を呼ばれて振り向くと、親友のユミちゃんが体操マットを重たそうに持ちながら、恨めしそうにこっちを見ていた。



「もう、こっち手伝ってよ」


「ご、ごめん」



慌てて駆け寄り、端を持ち上げると、ユミちゃんは用具室に向かって歩き始めながらため息をついた。



「ホントにブラコンなんだから…」



「…ごめん」



そう言われるとあたしはうつむくしかない。



「いや、別に謝ることないけどさ~、兄妹仲良しなのはいいことだし?」



「仲良くないよっ!」



よいしょっ、と用具室内にマットを下ろしながら、あたしは力いっぱい否定する。



あたしは…仲良くしたいけど…お兄ちゃんは…。



「そうなの?」


「………」

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