仮面な人たちの恋愛夢小説
第1章 雨の日のカプチーノ(F)
『え...』
公園の少し近くを通った彼女。
一人の男と、その目の前にいる一人の女性が、彼女の目に映る。
男の方は彼女が良く知る人物、何故なら数時間前に別れたばかりの元彼だったからだ。
相手の女性は、自分と別れる理由となった人なのだろう...。
彼女はどうして、っとその言葉ばかりが頭を過った。
思わず脚が二人の方へと向かう。
途中、足早になった所で彼女は誰かに腕を捕まれた。
『離して...っ!』
「それ以上見たら駄目だ..っ」
『いやっ...!』
「落ち着くんだ...!」
『っ...』
両肩をガッと掴まれて彼女は我に帰る。
自分を止めたのは、あのカフェの前で出逢った彼だった。
「行こう..」
『お兄さ...っ』
雅が言葉を発するよりも早く、彼に腕を引かれその場を離れた...──。
その時の彼からは、まるであのカフェにいたときの優しい表情の彼は見受けられず、険しい表情の彼がそこにはあった。