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仮面な人たちの恋愛夢小説

第8章 愛想兄妹(K)

矢車は彼女にまた来るといい残して病院を出て行った。
その直後、彼女の友達である日下部ひよりが病室へとやって来た。

『あら…?ひよりちゃん、と…お兄さん?』

『久しぶり桃深さん。‥この人は兄さんなんかじゃないよ』

ひよりとは半年前からの付き合いで、横にいる天道とは今日が初めて会うようだ。

「可愛いお嬢さんじゃないか。ひよりとは大違いだな」

『煩い』

『ふふっ‥仲がいいのね。羨ましいわ』

『すいません桃深さん。やっぱりお前を連れてくるんじゃなかった』

いいのよと笑う彼女。
ひよりに半分しばかれている天道は頭を掻いている。

「ところで、さっき君の病室を出ていく男の姿を見かけたんだけど…」

『あのクール系イケメンのことか?』

「ああ。彼奴とは知り合いか?」

『今日お知り合いになりました。兄との繋がりが深い方なんです』

「そうか…お兄さんの名前は?」

『影山瞬です。私は影山桃深‥貴方はひよりちゃんから聞いてます。天道さんですよね?』

「ああ。…そうか。成る程な」

首を傾げる桃深。
天道は気にするな、と言って手を握った。
そろそろ時間だからと、また来るといいひよりと共に天道は病院を出た。
天道が病院を出る際、こんなことを言い残していった。

「彼奴には気を付けろ」

彼女は天道の言いたいことが分からずにいた。
その夜。彼女はエレベーターを使い、初めて屋上にいた。
彼女は何か予感がしていた。
此処に来れば、また新たな出逢いがあると…──。

『誰?』

背後に感じる視線に彼女は車椅子を動かし、向き直る。

「影山さん、こんな時間に何してるんですか?」

『お医者…様…?』

彼女は医者であるであろう声の主に違和感を覚える。

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