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そんなバロンを余所に車から降りてきたのは女性で、スーツを身に纏っていた。
その女性はすぐに子供に駆け寄り、後から戻って来た親元へと返してやった。
女性は子供を親元へ返す際、こう言った。

『大切な物は、ちゃんとその手に掴んでいなさい。失ってから、後悔するその前に‥』

薄い蜂蜜色のフレーム眼鏡の奥にある優しくも厳しいその瞳は、子供の心を強くした──
怯んだインベスを倒したバロンは変身を解除し女性を真っ直ぐに見ていた。
彼には、女性が自分よりも遥かに強い者に見えてならなかった。

「お前‥」

『えっ‥あ、何でしょう？』

「…名は」

『バロンのリーダーが私の名前何て聞いてどうするんですか？』

「いいから言え！名は…！」

『‥乙咲瀬奈』

「…覚えておいてやる」

そう言って背を向けた戒斗は、真っ直ぐにまた来た道を歩き出した。