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夜会で踊りましょ!!

第13章 翼女、一人思う

「ただいま」
 翼女は自分の家(喫茶店)の内開きのドアを押して入る。



「お帰り」
 カウンターの中で翼女の父で、この喫茶店の店主の慎太郎(しんたろう)が、コーヒーのミルを回しながら迎える。


「お帰りなさい♪」
 そして、カウンターのいつもの席に常連の佐藤さんがコーヒーカップを軽く上げて、笑顔で迎えてる。


「ただいま!お父さん。佐藤さん、いらっしゃい♪」
 翼女は二人に笑顔で言葉を返す。


 佐藤 仁識(さとう きみさと)慎太郎とは大学生時代からの知り合い。


「買い物?」
 佐藤が翼女に聞く。

「はい。仲村まで行ってました」
 翼女が佐藤の質問に答える。

「浴衣はどうだった?」
 割り込むように父が声をかけてきた。

「あんまり見えなかった。迷子の女の子にママに間違われて、そっちが大変で!」
 少し肩を揺らして、父の方を向く。

「…そうか、残念だったね……、……」
 慎太郎は、翼女の顔をじっと見ている。

 ?の顔をする翼女。


「浴衣って今年は翼女ちゃん≪橘さま≫?」
 佐藤が二人の視野に割り込んできた。

「はい」
 翼女が返事をする。

「じゃ、新品買って気合いれなきゃね」
 翼女の両手をしっかりつかむ。

「あ…」
 困った顔で固まる翼女。


「!……ぉぃ…」
 慎太郎のミルを引き手が止め、小さく佐藤に声をかける。


「あぁ、ごめんね。ちょっと、≪橘さま≫に興奮して!」
 急いで手を離す佐藤。

「…たくっ…」
 引いていたミルを再び回し始める慎太郎。

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